直球すぎです、成瀬くん



「柚ちゃん、バレー興味あったりする?」

「…え……あ、はい…?」

「柚!」



突如、後ろから聞き慣れた声が聞こえて振り返る。

そこには、どこかほっとした表情の百叶が立っていた。


「百叶…」

「よかった、戻ってくるの遅いからどこかで倒れたりしてるんじゃないかって、心配になって出てきちゃった」

「ご、ごめんね、心配かけて…」

「ううん」


首を横に振った百叶の視線は、その直後私の後ろへと向いていた。


「…あ、柚ちゃんの友達の…」


百叶のことも覚えていたらしい先輩は、百叶と目を合わせると少し微笑んだ。


「…あ、に、西内百叶といいます」

「百叶ちゃんね」

「っ、!」


同様にちゃん付けで呼ばれた百叶は、一瞬驚いたように目を見開いた。


「よかったら、2人で大会見に来てよ、バレーの」

「え……?」

「冬休み中なんだけど、都合よかったら。……あ、あれ、ポスター、大会の」


そう話す先輩が指差す先には、掲示板に貼られた1枚のポスター。年明け1月に開催されるらしく、日時と場所が目立つように記されていた。



「朝井休憩終わんぞー」


静かだった廊下に響いた、よく通る声。

先輩の後ろから声をかけたその人に応えるように、今戻る、と告げると、先輩は私たちに向き直った。


「じゃあ、また」

「…あ、はい…」


ひらひらと手を振ると駆け足で体育館へと戻る先輩の後ろ姿を、百叶とぼーっと見ていた。



「…戻ろっか」

「…あ、うん」


体育館の扉が閉まりその姿が見えなくなると、百叶がそう言って私を促した。



「…あの人、文化祭の時に声かけてきた人だよね?」

「…あ、うん」


図書室までの廊下を歩きながら、思い出したように口を開いた百叶。


「バレー部だったんだね、通りで背高いと思った」

「…そうだね、確かに」



見上げないと目を合わせて話せないほどの背の高さ。バレー部であることが、ものすごく納得できた。




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