直球すぎです、成瀬くん
「……宮城くんて、本当、男女関係なくあんな感じなんだね、聞いてた通り」
少し騒ついた周囲も競技が始まるとみんなそちらに注目したので、先ほどの妙な緊張感はなくなっていた。
グラウンドを眺めながら、不意に玲可ちゃんが言った。
「うん、しかもあたしたちの名前知ってるって何事!?ああいうところまでもイケメンはイケメンなんだな〜……推せる…」
手のひらをぎゅっと握ると、感動しているのか、まりなちゃんの声色はいつもよりうわずっていた。
………確かに、どうして名前、知ってたんだろう…?
同じ学年だから知ってるっていうのは、いくら宮城くんみたいな人でも難しいような気がするし……
………いや、宮城くんくらいの人になれば、学年みんな友達、みたいな感覚で覚えちゃうのかな…………?
クラス一緒なら友達じゃん?と、さも当然のようにさらりと言った宮城くんを思い出す。
…………あんな感じで、きっといろんな人たちと友達なんだろうなぁ……………
「…あ、てか」
そこまで言って、まりなちゃんは周辺をきょろきょろと見回した。
大丈夫と確信したのか、そのまま続けた。
「……あの、成瀬くん?てさ、まじでずっとあんな感じなんだね」
「……あー、さっき宮城くんに連れてこられた人?」
「そうそう」
いつもより少し声のボリュームを抑えたまりなちゃんと玲可ちゃんが、私と百叶に目を向けながら話した。
「クラスでも全然喋んないし、てか人と喋ってるの見たことない気すらするし、休み時間もいつもいないし」
「確かにねー、あたしもさっきので初めて声聞いたかも」
「ちょっと近寄りがたいっていうかさ。ああいう人って、怒らせたらめちゃくちゃ怖いタイプだよ」
…不本意にも、現に成瀬くんを怒らせてしまっている私には、その言葉がよく理解できた。
怖いし、苦手だなと思ってしまっている自分がいる。
私なんか、人に対して苦手だとか言える立場じゃないけれど、成瀬くんには、初めて会話(?)をした時から、何となく感じていた。苦手かもしれない、とーーー
「でも、あの成瀬くん相手にも動じずに話してる宮城くん、すごいよね」
少し重たくなっていた空気を切り替えるように、百叶が宮城くんの話題を振った。
「わっかる!さすが宮城くんってカンジ!」
「まりなもう既に宮城くんに気持ち傾いてない?」
「だーかーらー、そういうんじゃないって、宮城くんは推しなの。推し」
「どーだかね」
「ちょっとホントだからね!?」
疑いの目で見る玲可ちゃんに、まりなちゃんは何度も力説していた。