直球すぎです、成瀬くん



「衣装って言ってもさー、やっぱり買うと高いんじゃん?」

「確かにねー、やっぱ作る方が予算的にいいよね」

「……あ、それなら私、生地安く売ってるお店知ってるよ」

「え、ホント!?どこどこ?」




翌週。

いよいよ文化祭準備期間に入り、学校は一気に文化祭モード。

私たちのクラスも各係ごとに分かれて、準備を進めることに。

複数の机をくっつけてみんなで集まり、まずは衣装をどう準備するかの話し合いが始まった。



「えーとね……あ、これ、ここなんだけど…」

「えー初めて見た!こんなお店知ってんの百叶!」

「うん、小さい頃からよく行ってて…」


スマホの画面を見せる百叶の周りに集まる女子………の輪の隅に、私。



百叶が同じ衣装係なのはものすごく心強い……けれど、メイド服姿も見たかったなぁ…と少し複雑な気持ち。



「…ね、柚も知ってるよね、このお店」

「……えっ…?」


声をかけられた。

その手にはスマホ。お店のホームページが表示されているようで、カラフルな生地が等間隔で、画面いっぱいに映されていた。

その主ーーー百叶と目を合わせると同時に、集まる視線。


……何だろうこの、いたたまれない感じ……



「……あ、う、うん、私も、知って、ます…」


何とか笑顔を作ってそう答えると、女子たちの視線から解放される。


「へえ〜、やっぱ2人仲いいんだね」

「…あ、うん、中学が一緒で」


そぉなんだ〜、と口々に言う女子の輪に、自然に溶け込んでいる百叶を見て一気に、自分が情けなくなってくる。


……どうして、こうも自分は、いつも…………


百叶みたいに自然に溶け込めたらいいのに、私にはそれが上手くできない……溶け込み方がわからない。


……かといって下手に口を開けば、知らないうちに嫌われてしまうかもしれない…………そう思うと、私はやっぱり何もできなかった。


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