煌めいて初恋
2章 乗り越えたい

「行ってきまーす!」


楓はいつもボサボサの長い黒髪に、よれた制服、少しずれた鞄を担いで家を飛び出した。


「いってらっしゃーい」


後ろで母ののんびりとした声が聞こえてきたが、楓は焦って走っていく。


「ヤバイ!遅刻する〜〜」


始業式からしばらくは恵と登校していたおかげで、遅刻することはなかったが、恵の部活が始まり、ヴァイオリンに夜遅くまでいそしむようになったので、また遅刻ギリギリの日々を送っている。


桜が散り、すっかり新緑の芽生えるキツイ坂も我慢して走ったおかげで、予鈴ギリギリに教室に入ることができた。


「ま、間に合った〜」


楓の学校では、予鈴に部活が終わるのでまだほとんどの生徒が教室にはいない。
楓は部活に入っていないので、予鈴ギリギリでも大丈夫なのだ。
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