きみに想いを、右手に絵筆を
「……え?」

 白河はキョトンとしていた。

「ごめん。今凄い良い顔してたし、モデルだと表情が堅くなるからさ。嫌だったら消すけど」

 そう言って撮った写真を見せると、彼女は髪を触りながら、恥ずかしそうにふるふると首を振った。

「……別に。大丈夫です」

「そっか。ありがとう」

 何となく宝物にしようと思った。

 可愛いだけじゃない彼女の人となりを、もっともっと知りたいと思った。

 午後四時になり、白河を駅まで送って行く。

 帰りは親がそこまで迎えに来ると彼女は言った。

 多分、箱入り娘って言うか大事にされてるんだろう。中学の頃、登校拒否にもなったみたいだし、心配されているのだろう。

 駅に着いて程なくすると、白河の母親らしき人が車で迎えに来た。

 彼女のお母さんにジロジロと顔を見られて、緊張が表に出る。俺はペコッと頭を下げた。

 て言うか、アレか。

 白河の話からすると、普段から男と会うなんて事は無いだろうし。品定め、みたいな。

「じゃあ、白河。また連休明けに?」

「はい」

 彼女の母親に「失礼します」と一礼を残し、立ち去った。

 自宅への道のりを歩きながら、スマホを取り出し、途中で足を止める。

 白河の写真を見ると、胸の内がほっこりと温まり、どこかくすぐったい気持ちに満たされた。
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