黙って俺を好きになれ
「まさか結婚すんの?おかしくない?全然そーいうカンジじゃなかったよね?意味わかんないんだけど?」

「・・・ごめんね・・・」

声が震えた。

エナは無表情に怒っていた。憤りを抑え込みながら眼差しで責めていた。相談しないで突然だったことは本当に謝っても謝りきれない。聞く耳を持ってくれるか分からなかったけど、テーブルの下で拳を握りしめ勇気を奮い立たせる。

「・・・結婚はしないけど近くに引っ越すの。いま住んでるアパートだと遠いし、なかなか会えなくて・・・。仕事も向こうで探すつもりだから、それで」

「それで、って」

険しい表情のまま続けざまに。

「糸子の意思?彼氏の言いなりじゃなく?転職なんてカンタンじゃないよ?」

「うん」

「別れたらどーすんの?ちゃんと考えてる?目の前だけ見て失敗したって、1000(パー)自業自得だからね?」

眉間にしわを寄せたエナは厳しい言葉をぶつけてきた。非難でも、真剣に心配してくれてるのでも、彼女には真摯に応えたかった。

「なにをどう選んだらいいのか答えが出せなかった・・・。でも、してあげたいことが分かったから・・・先輩のそばにいるって決めたの」
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