黙って俺を好きになれ
ねぇ糸子さん。温もりがそっと離れた。

「アイツがもし糸子さんを捨てたらね、もう待たないよ。今すぐ糸子さん抱いて全部オレのものにするから」

「・・・!」

筒井君を仰いだ。・・・泣きそうに笑っていた。傷付いた顔をしていた。

自分がそうさせてるのを感じていても心を砕く余裕がなかった。かまわないで欲しかった。力なく項垂れ、独り言のようにただそこに在った感情を絞り出した。

「・・・・・・帰って。幹さんはそんなことしない・・・、そんな人じゃない。なにも言わないでいなくなる人じゃない、・・・約束したの、わかってるの。だからほっといて・・・。じゃないと、筒井君をきらいになる・・・・・・」

「・・・いなくなった?」

険しい声音で我に返った。

「敵だらけで危ないヤツだって教えたでしょ。それでも待つの?生きてるか死んでるかも分からないのに?」

何より認めたくない現実を筒井君は容赦なく口にした。・・・躰の芯が折れそうに震えた。
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