黙って俺を好きになれ
無感覚に冷えていた躰と芯にほんのり温度が通い、ペットボトルの温もりを掌に感じつつ私は思い切って声をかけた。

「筒井君に会ったんですか・・・?」

スピードに乗った車を黙って操る山脇さん。答えてくれる気はしなかったけど、やっぱり(いら)えはなかった。

しばらくして信号待ちに差し掛かった。古びたアーケード街。ラーメン店や居酒屋がぽつぽつ並ぶ。駅が近いのかもしれない。

「・・・あの坊主にしときゃよかったんじゃねぇのか、嬢ちゃん」

前置きもなかった低いそれが、さっきの答えなんだと遅れて飲み込む。視線を戻し、じっと山脇さんの後ろ頭を見つめた。

「若も聞かねぇ(たち)だからな。・・・引き返せねぇぞ」

淡々とした口ぶり。この人の言葉はいつも無情に私を揺さぶる。
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