こじらせ社長のお気に入り
大手とは違って、各部署を回るような新人研修はないと聞いている。
初日の今日、それぞれの所属する部署が言い渡されて、そのまま業務が始まることになっている。

その前に、まずは全社員との顔合わせだ。

がっしりとした体型に甘いマスクの社長が、前に立った。
面接以来の対面だけど、印象に残るぐらい、整った顔立ちをしている。
短めのダークブラウンの髪は悪戯に遊ばせ、少し大きな目は女性を虜にしてしまいそうな甘さを滲ませている。

「社長の城山颯太です。今年で30歳にな……」

「社長!サバ読みすぎですって」

「嘘はよくない!!」

辺りは一斉に苦笑に包まれた。
新人8人だけわけがわからず、ポカンとしてしまう。

そこへすかさず、副社長が割って入った。

「社長、情報は正確に。願望は夢の中だけでお願いします。
新入社員のみなさん、副社長の瑞樹楓です。社長と同じ、36歳です」

〝社長と同じ〟と強調してわざわざ年齢を公表したのは、意図的なのだろう。

社長と比べると細身の副社長は、その鋭い視線から冷淡そうに見えるものの、容姿はすごく整っている。彼もまた、女性を惹きつける魅力的な容姿だ。

対照的な違いは、副社長の左手に指輪がはめられているということ。既婚者のようだ。
2人とも、おそらく180cm以上の長身で、並んで立っているだけですごい迫力だ。

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