必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「おつかれさまです」

 エイミはにっこりと微笑んだ。

 ちょっと、いや、かなり怖いけど、こんなに疲れ果てるまで子供の相手をしてやったのだ。彼は優しい人間に違いない。

 それに……エイミの黒髪を見て、眉をひそめなかった人は初めてじゃないだろうか。そんなささいなことが、エイミにはとても嬉しかった。

「さて、なにして遊ぼうか!」

 エイミは今度は三つ子に向かって、笑いかける。こんなに小さな子を相手にするのは、久しぶりだ。楽しみなような怖いような……。

 定番の『高い、高い』、部屋にあったなにやら高級そうなおもちゃ、そこらへんに転がっていた麻袋でネズミの人形を作ってやったり……全力で遊んで、遊びのネタが尽きる頃には三人ともずいぶんとエイミに慣れてくれた。

「キャーキャー」
「キャハハ」

 明るい陽の差し込む部屋に、無邪気な子供の笑い声がいつまでも響いていた。

 その光景は、かつてエイミが夢見ていたものだった。

(寝ている彼が私の夫で、この子達が私の子供だったらな)

「……なんてね」

 エイミはほんの一瞬、そんな妄想をして、すぐに首を横に振った。

 あたたかで幸せな家庭は、自分には手に入らないものなのだ。いつまでも追い求めていても、辛くなるばかりだ。





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