必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 エイミがもんもんとしていると、ジークはさらりとエイミの手を取りぎゅっと強く握ってくれた。

(はわわ~。なに、その手の握り方、すっごくかっこいい! あぁ、やっぱりもっと……)

「ジーク様!」
「エイミ!」

 ふたり同時に言って、顔を見合わせた。

「えーっと……ジーク様からどうぞ」
「いや、エイミから」
「でも、私のほうは大した話じゃないので」
「いや、俺のほうもだ」

 沈黙が流れる。意を決したのはエイミの方だ。

「で、では私から話しますね! ジーク様!」
「な、なんだ?」
「い……い……」
「い? 胃が痛いのか?」
「イチャイャしたいです!」
「え……」

 自分で思っている以上に大きな声が出た。エイミは急に恥ずかしくなって、両手で顔を覆った。

「……だ、だめですか?」

 今度の声は消え入るように小さい。

 ジークはははっと白い歯を見せて、笑った。 

「なにもだめじゃない。俺もまったく同じことを言おうとしていた」

 ジークはそのままゆっくりと床にエイミを押し倒すと、柔らかな唇を奪った。

「ジーク様……ベッドはすぐそこです」
「わかってる。が、この短い距離すら今は惜しい」

 エイミも同じ気持ちだった。だからもう何も言わずに、彼のキスを受け入れた。
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