新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 誰もが簡単になれるものじゃない、大手企業のトップに立てる。俺の人生も、それほど悪くないと思うことにした。
 
 腹を決めると、完璧な自分を演じることに磨きがかかった。その分、気心が知れている陸と彩香の前では、思いっきり素の自分で過ごし、ガス抜きをしながら生きてきた。

 そんなときだ、陸と彩香から付き合っていると聞かされたのは。

 いきなり謝罪からはじまり、いったいなにごとかと思った。聞いたら喜ばしい話じゃないか。
 どうやらふたりは俺が激怒し、反対されると思ったらしい。親友と妹のように可愛がってきた大切なふたりが幸せなのに、反対などするものか。

 だが、ふたりがそう思うのも無理はない。俺と彩香は婚約関係にある。

 彩香も俺との結婚を受け入れようと思っていたのだろう。しかしふたりは恋に落ちた。

 正直に打ち明けたところで、父さんが婚約破棄を受け入れるわけがない。業務提携も絡んだ婚約だからだ。

 会社のために誰よりも仕事に打ち込み、自分の後を継ぐ俺に対しては厳しく躾けてきた。そんな父さんに話したところで、それこそ激怒されるだけだろう。

 陸もまた、駆け出しの小説家。自分に自信が持てずにいて、ふたりの交際は俺たちだけの秘密となった。
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