クールな王子は強引に溺愛する
「リアム様。私にも剣術を教えてくださいませ」
「なにを……」
「強くなりたいのです」
リアムはエミリーの柔らかなプラチナブロンドの前髪を持ち上げ、顔を撫でながら言う。
「そうだな。剣術よりも護身術の方がいいだろう。グレイソンにいい講師がいないか聞いてみよう」
「はい。ありがとうございます」
礼を言うと、リアムはぼやくように言った。
「しかし護身術を学ばれると、不用意に襲えなくなるな」
「えっ」
「冗談だ。今日は疲れた。もう休もう。エミリーも明日に備えて寝た方がいい」
エミリーの頭に手を置き、言い含めるように告げたリアムは部屋の奥に進み軍服を脱ぐ。
体を交えてから、毎夜求められていたエミリーは戸惑ってリアムを見つめる。着替えを終えたリアムは穏やかな顔をさせ、頬に手を伸ばした。
頬に当てられた手が、いつになく優しい。
「どうした。眠れぬのか」
「いえ、その」
エミリーの手を引き、ベッドに横になるリアムはそのまま自分の腕の中にエミリーを抱き寄せた。
「エミリーは柔らかで抱き心地がいい。よく眠れそうだ」
逞しい体に抱き竦められ、胸がドキドキと騒がしい。毎夜、もっと恥ずかしい姿を晒しているはずなのに、目の前の厚い胸板に手を当て頬を寄せると、胸に温かい気持ちが広がっていく。いつもよりもリアムを近くに感じる気がした。
「おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」