クールな王子は強引に溺愛する

 目くじらを立てるグレイソンから逃れるように、リアムは憎まれ口を叩く。

「もう俺は第二王子ではない。従者をする必要はないのだぞ」

 グレイソンとは幼い頃から共に過ごし、悪友のような間柄から従者として側にいた。それも王子だったからこそだ。王子という立場を退いた今、グレイソンがリアムから離れていくのは自由だ。

「リアム様は剣術に長けていても、脳筋でございますから。おひとりで送り出しでもすれば、新境地でやっていけるのか心配で夜も寝られません」

 相変わらずの減らず口を聞かされ、リアムも応戦する。

「脳みそが筋肉だと言いたいのか? チェスで俺に勝ってから言え」

「チェスにも腕力が必要にございますから」

 口の減らないグレイソンに、諦めたように言う。

「俺に力があるうちに打首にでもしておけばよかった。だいたい、間違えるな。ひとりではない。エミリーもいる」

 エミリーは自分を入れてもらえたのがうれしくて、頬を染める。
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