クールな王子は強引に溺愛する

「緊張いたしますね」

「エミリーは俺の隣で微笑んでいればいい」

 お飾り妃を思い起こさせる発言だったが、今日ばかりはありがたかった。

「夜会は苦手なままでしたわ」

 大勢の貴族が集まる予定の今日は、どうしても社交界を連想して顔に影を落とす。

 たくさんの殿方の中から将来の夫を探す夜会ではないにしても、そのときの苦手意識がどうしても先行する。

「エミリーが社交界デビューを済ませば、いつでも夜会で会えるのだと思っていたが、甘かったな」

 エミリーの社交界デビューの時は、都合が合わず顔を見られなかった。その後、何度夜会に参加してもエミリーとは会えなかった。

 夜会に参加すれば踊りたくもない令嬢とダンスをする羽目になり、曖昧に笑みを浮かべれば騒ぎ立てられた。

 いい加減、飽き飽きしてきた頃、エミリーが夜会に参加しない理由を調べさせ、エストレリア伯領の状況とエミリーの不運な立場を知った。

「夜会でお会いできるのを、心待ちにしてくださっていたのですか?」

 エミリーはレシアスが第二王子リアムだと知ってから、自分の想いは分不相応だと悟った。

 そのため、お目通りの際にひと目見られれば幸せだと思っていた。王子であるリアムには城に行けさえすれば、姿を見られるとばかり。

 実際にはそれさえも叶わず、やはり自分が想いを寄せるには、おこがましいほどの人なのだという認識が強くなったのを覚えている。
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