クールな王子は強引に溺愛する

 王都の中心にある城は見えているのになかなか着かないという迷いの森にでも迷い込んだように、行けども行けども着かない気になる。

 それは城が大きく遠くから見えていて、近づいた気になれないから。そして人の多い王都では、馬車はこれまでのように速度を出せないのだ。

 あとはエミリーの気持ちから来るもので、王都、特に城の中には苦手意識があるせいかもしれない。

 そうは言っていても進み続ければ着くもので、城に到着し、リアムと共に城の内部へと案内される。

 石造りの外壁とは異なり、内装は磨かれた木の重厚感にあふれている。入ってすぐのロビーには深紅の絨毯が敷かれ、南向きの採光窓からの日差しが室内を照らす。

「国王に拝謁していただきます」

 左右に広がる優美な階段を登り、先へと進むと謁見を待つ控えの間に通された。ここに来るのは、社交界デビューするときに陛下へお目通りを受けた以来だ。

「準備が整いました」

 緊張の面持ちで開かれた扉をくぐり奥へと歩んだ。
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