赤い宝石の約束


昼休み、部下達とランチ。


新しくできたお店へ。


とっても開放感があって明るく、とってもおしゃれなお店だった。


話題は、新人清水くんの話で持ちきりに。


彼女いるんですかね?


独身ですかね?


いくつですかね?


結婚してたりしてー!


もうすぐ30になる私。


20代前半の、ピチピチの部下達の話を静かに見守るのだった。


昼休みが終わり会社へ戻る。


すると、上司が清水くんを連れてやってきた。


『神崎さん、清水くんに提出書類渡してくれる?書き方とかも教えてあげて。』


『はい!わかりました。』


書類を印刷し、ミーティングルームへ。


ひと通り説明すると、


『ありがとうございました。』


『いえいえ。』


机に広げた書類を集める。


清水くんもそれを手伝いながら、


『朝はエレベーターで…すいませんでした…』


『エレベーター?』


覚えてたけど、覚えてないふりをしてみる…


『あの、誰も乗ってないと思ってしまってドアを…』


『あっ!(思い出したふり)全然気にしないでください!よくある事ですし。』


いや、ないだろ…


『あの、驚かせちゃったお詫びに今日ご飯でもどうですか?』


いやいや、もっとないだろ…


って、


えっ!?


今、私を誘いましたよね?


清水くんを見ると、決してふざけている素振りはなく…


逆にとても真剣だった。


透き通った綺麗な眼で私を見つめていた。


が、


いかんいかん!


とってもとってももったいないけど…


『今日は予定が…』


書類をまとめ、席を立とうとすると、


『あの!!』


私の手首を掴んだ。


『僕のこと、覚えてませんか?』


と言った。


『えっ?』

 
『僕のこと、覚えてない?真央…』


『なんで名前…』


『やっと会えた…ずっと探してたんだ…』


透き通った眼に涙が溢れている。


もしかして…泣いてるの?


清水蓮?


清水蓮…


誰?


思い出せない…


無言でいる私。


すると清水蓮は持っていた私の手を引き、


優しくそっと抱きしめた。


なにこれ…


夢…だよね…


目を開けた?


ベッドの中。


夢だった。


ありきたりだけど、ほっぺをつねってみる。


うん…痛い…


てか、1度、覚めなかったっけ?


お母さんに起こされたよね?


って…


私は一人暮らしだ。


よくよく考えれば、


会社だって10階じゃない。


部下は1人しかいないし。


あんなおしゃれなランチのお店なんか周辺にあるわけもなく…


夢の中の私!早く気づけ!


てか、まだドキドキしてる。


ーやっと会えた。ずっと探してたんだー


いったい、誰なの?


あの人は、だれ…


あれ??


ん???


あれれ???


顔が…


顔が…


思い出せない!!


嘘でしょ!?あれ!?


どんな顔だったっけーーー!!


とまぁ、夢なんてこんなもんだ…


さっ、会社…


って、今日は土曜日でお休みだ。


なにしようかな〜


プルルプルルプルル…


電話が鳴った。

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