花屋敷の主人は蛍に恋をする




 次の日に2人は飛行機に乗って住み慣れた土地へと戻った。飛行機に乗っている間に、樹が菊那と手を繋いでくれたり、「いつでも屋敷に遊びに来てくださいね」と終わりではないことを伝えてくれたりと、本当に恋人になれたのだと、実感出来た。


 それからも言うもの、菊那は樹の屋敷にお邪魔する事が多くなった。庭でお茶をのんで話しをしたり、菊那が家で作った料理を屋敷で食べたり、もちろんデートにも行くようになった。
 菊那は仕事以外ではあまり外出をしないタイプだったので、生活がガラリと変わった。それでも、樹に会うのが楽しみで仕方がなく、日々が充実しているな。と、感じていた。


 「いつも料理を持ってきてくださって……本当にすみません」
 「いいんです。私が樹さんと食べたいだけなので」
 「ありがとうございます。……料理は全くダメなので、久しぶりに食べた手料理は本当においしくて……楽しみにしてしまってます」
 「そう言われると、頑張ってまた作りたくなりますね」
 「あぁ……お願いしたわけでは……いや、ぜひ食べたいのですけど。今度は外食をしましょう。菊那さんがゆっくり出来る時間も必要です」
 「それも楽しみです。……それにしても意外でした。樹さんが淹れてくれる紅茶はとっても美味しいので、お料理が好きなのかと」



 菊那は、クスクスと笑いながらそう言って樹を見た。菊那の料理を食べながら少し恥ずかしそうに苦笑いしている。
 樹は料理が全く出来なく、ほとんどが外食で家で食べるときもコンビニやお総菜がほとんどだというから驚きだった。菊那は樹が優雅に紅茶を淹れるイメージから、料理上手なのだと勝手に想像してしまっていたので、それを知った時は驚いてしまったものだった。
 そのため、栄養不足も心配なので週に何度かは夕食を届けに来ていたのだ。もちろん、菊那も一緒に食べて、彼との時間を作りたいのが本音でもあった。 
 


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