花屋敷の主人は蛍に恋をする




 「あ、あの紫の花!樹くんと初めて会ったときに見た花だよね。………名前なんだっけ?」
 「桔梗ですよ。絶滅危惧種に登録されています。英名は膨らんだように見える姿が風船に似ていることからバルーンフラワーと呼ばれています」
 「へー風船花なんだ。なんか、そっちのほうが可愛いね」
 「そうですか?」
 「そうだよ!あ、隣にある似てる花は?」
 「あぁ……それは、ツリガネソウで別名が………」
 「わーーーーい!お花がいっぱいだー!」


 2人が話をして居ると、後ろを走る子ども達が近寄ってきた。大きな声だったので、樹は驚いてそちらの方を向いた。けれど、それは少し遅かった。


 ドンッ

 
 と、体と体がぶつかる音がした。
 けれど、自分に衝撃は来なかった。けれど、隣に居たはずの碧海が視界から消えていた。


 「………え…………」


 と、という彼女の低い音と共にドサッと倒れる音が重なった。
 走っていた子どもが前方を見ていなかったのな碧海にぶつかったのだ。突然の事に、碧海はこらえられずに倒れてしまったのだ。樹が手を伸ばしても、すでに遅く彼女は前方に倒れてしまった。
 草花が植えられている方へ、と。


 「碧海さん!?大丈夫ですか!?」
 「………あ………いや…………」
 「え…………」


 樹が彼女の方を見ると、彼女の肌に触れてしまった花や草、木がみるみる枯れ始めたのだ。手袋だけでは手が触れることしか防げない。腕は頬、首や足元などは肌が出ている。そして驚いた事に、触れた草花だけではなく、その花の隣にも伝染し、彼女の周りだけが茶色に変わっていくのだ。
 その中心にいる碧海は体を震えさせて、動揺してその花達を見つめている。



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