花屋敷の主人は蛍に恋をする
「………あの………樹さん。この道って花屋敷と逆方向ですよね?」
「えぇ。そうですね」
「………どこに向かってるのですか?」
「秘密です」
「……………」
てっきりいつものように彼の自宅に招かれると思ったが、それは違ったようだ。
始めから菊那の想像していた事は無駄だったとわかる。
「樹さん、目的地だけでも教えてくれませんか?」
「もうすぐ着きますので安心してください。20分ぐらいで到着しますよ」
「…………(全然すぐじゃないです!)」
菊那はおろおろとしながら町の景色を見つめながら、必死に行く先を考える事しか出来なかった。そんな菊那をよそに、樹だけがご機嫌にドライブを楽しんでいた。
そして、20分後。
菊那の予想を遥かにこえる場所に到着していた。広い敷地にたくさんの車が駐車されており、目の前には大きな建物がある。そこにはたくさんの人達が行き来しており、皆大きな荷物を手にしていた。そして、時折空から轟音が響いてくる場所。
「空港…………」
「はい、到着しました。そして、菊那さんにプレゼントです」
「え………」
樹と菊那は手に大きな荷物を持ち、空港に到着した。樹はとても目立っており、先程からチラチラと女性だけではく男性も彼を見ては驚いた目で見つめたり、惚れ惚れとした表情で見入っているようだった。
けれど、樹は慣れているのかそれらの視線には全く気にせずに、1度足を止めて菊那の方を向いた。
そして、菊那にある物を手渡したのだ。
空港の入り口で樹にプレゼントされたもの。
それは九州行きの航空チケットだった。