花屋敷の主人は蛍に恋をする




 「……でも恵の話は本当だよ。好きなものを頑張って努力するって、思春期では何かカッコ悪いイメージだろ?それがどうしておかしいんだろう?って不思議だった。自分が変わっているのかって思ってた。けど、菊那は全くそんな事なくて……好きを好きで居られるのはかっこいいなって思ったよ。だから、その……まぁ、いいなーって思ってた。だから、あの頃のままの菊那で安心したよ。俺の目標にしてた人のままだった。………だから、そんな菊那に俺の絵を見てもらえてよかった。ありがとう、菊那」
 「………こちらこそ、ありがとう。今度来るときは日葵くんと、恵さん、陽菜ちゃんにプレゼント持ってくるね。もちろん、向日葵の刺繍を」

 
 自分は日葵のために何も出来ていなかった。守れなかった。ずっと、それが悲しくて悔しかった。

 けれど、それはどうも間違えだったみたいだった。

 日葵の背中を押してあげられる存在になっていたのだ。それがわかって、菊那の胸はジーンッと温かくなった。



 菊那の心の中にあった種。
 ずっと固く動かなかったのは、太陽のような向日葵がなくなってしまったから。悲しさと悔しさで種は芽吹かなかった。けれど、日葵に再会した事で、その温かい太陽の花の種はポンッと芽が出た。
 そんなぬくもりを、菊那は感じたのだった。



 

 
 
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