クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 大切な祈りの最中だというのに、彼女たちはどこか気もそぞろだった。そんな浮足立った周囲の空気に引き摺られ、私もいまひとつ集中し切れぬまま、朝の祈りを終えた。
「今日は皆、どうしてしまったのかしら? ずいぶんと落ち着きがないようだけれど……」
 聖堂を出て食堂に移動しながら、隣を歩くカ―ラに声を潜めた。彼女は私と同い年の十六歳。ハシバミ色の瞳とふわふわとカールした赤茶色の髪をした元気印の少女だ。サバサバとして、ちょっと男勝り。口調も相まって修道女見習いの間では、兄貴分と慕われている。
「なんだよ、マリアは知らないのか!?」
 カーラが驚きの声をあげ、ガバッと私を振り向く。
 その動きで、彼女の髪が軽やかに宙を舞う。私は柔らかな質感の彼女の髪が大好きだが、本人は気に入っていないらしい。彼女は普段から私の金髪を戯れに梳いてみては、羨ましいとこぼしていた。
「知らないってなんのこと?」
「聞いて驚くなよ! どうやら、来るんらしいんだよ」
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