クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ドリーも私たちと同じ十六歳。彼女はおしゃれに余念がなく、普段から亜麻色の髪を巻き、顔には薄化粧を施している。
 さらに今日は、口元に宛がわれた手の爪までが真っ赤に塗られているではないか。とはいえ、さすがにそれは修道女たちに見咎められて、午前の勤労の前に落とすことになるだろうが。
「そうね、ドリー。あなたの言う通りよ。私は、主と生涯を共にするわ。……それじゃあ、カ―ラ。私、朝食当番だから、先に行くわ」
 言うが早いか、私は厨房に続く廊下の角を曲がった。
「ちょっ!? おいマリア、待……って、行っちゃったし。……おい、ドリー! お前がヘンな事を言うからだぞ!」
「なによヘンな事って。私は本当の事しか言ってないわよ」
「ったく。……けど、ドリーがドリーなら、マリアもマリアだ。あたしたちはまだ十六歳だ。主に生涯を捧げると決めてしまうには、早すぎる気がするよ」
「それには同感ね。素敵な男性と恋もしたいし、デートもしたいわ!」
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