クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
「ありがとう存じます」
 院長室を辞すと、俺とマリアは手早く荷物を纏め、逃げるように修道院を後にした。
「すまんなレックス、残る修繕の指揮はお前に任せた」
「おやおや、今更なにをおっしゃっているやら。あなたの下で、私がここまでどれだけ無理な案件を捌いてきたと思っているんですか。とはいえ、せっかくあなたの口から『すまない』とおっしゃっていただいたわけですし、騎士団の通常業務に戻った後で、色々と融通していただくことにいたしましょう」
 唯一俺たちの見送りに同行したレックスは、ニヒルな笑みでこんなふうに軽口を叩きながら、俺とマリアが船に乗り込むのを見守った。
「まったくお前は相変わらずだな」
「ええ。このくらいでなければ、あなたの近習は務まりませんので」
 俺はヒョイと肩を竦めることで答えると、食えない近習からマリアに視線を移し、彼女の乗船をサポートした。
「さぁ、マリア。君は船室に入っているんだ」
 甲板に降り立つと、海風を受けぬようマリアを船室に促して、俺は船首の操舵室に向かう。
「え、ええ」
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