クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 船が岸から遠ざかり、少女の声も遠くなる。ふたりは、最後の別れを惜しむように、必死で手を振り合っていた。
「それから騎士団長ー! マリアを不幸にしたらあたしが許さないからな! 覚えておけー!」
 そんな別れの最後の最後、岸上の少女が思い出したように、渾身の叫びをあげる。すでに岸からはだいぶ距離があったのだが、なぜか少女の脅しはうまく風にのって、俺の耳に届いた。
 ……修道院長の言葉とはまた違う。しかし、勝るとも劣らない重みでもって、俺の胸に迫る言葉――。
 俺は左手を高らかに掲げ、妻の親友に了承の意を伝えた。
 ……始まりは、歪かもしれない。けれど俺が、マリアを誰よりも幸せな花嫁にしてみせる――!!
 熱い誓いを胸に、俺はマリアとふたり、修道院島を後にした。

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