クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ――コンッ、コンッ。
「ライアン様、朝早くに申し訳ありません」
 っ! 扉越しに掛かけられた家令のエドワードの声で、摘まんでいたリボンからパッと手を離す。
「一体どうした!?」
 内心で舌打ちをしながら振り返って声を張る。
「昨夜、グリニッジ伯爵が死去されたそうです。その報せを携えて使者の方がやってまいりまして、応接間でお待ちいただいております」
「おい。実家の父ならいざ知らず、グリニッジ伯爵と俺はほとんど面識がないぞ?」
「おそらくグリニッジ伯爵位を継ぐご子息が、次期侯爵としてのライアン様に配慮を示されたのではないでしょうか」
 張り切っていた俺と紳士は、しょんぼりと項垂れた。
「……わかった。すぐに行こう」
 ガックリと肩を落とし、いそいそと寝台を降りる俺を、マリアが無邪気に見つめていた。
「すまんが、そういうわけだ。俺は先に行くが、君はまだゆっくりしていてくれ」
「ええ。残念だけれど、使者の方をお待たせしてはいけないわね」
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