Everlasting Love〜きみに捧げる永遠の愛の歌〜
7.特別になれないピアニスト

 初めてライブをした日を思い出す。

 あの日、エセの企てにまんまとハマった私は、そのステージで初めて一人で最初から最後まで作った自分の歌を歌った。そして私はそうちゃんのことを思い出し、倒れた。

 体が熱くて、視界歪んで、息苦しくて、頭が痛くて、自分の体なのに思うように動かせなくなった。

 だけど、今は違う。

 拍手も歓声も、観客の表情もちゃんと認識できる。疲労感はあったし、心の痛みもちゃんとある。ただ、今は、受け入れられる。

 冷静でいられる。

 そして私は再度決意した。



 プロのシンガーソングライターになろう、と。


 
 ステージを降り、裏でギターを手早くしまう。そして私はステージから離れた。

 この後のステージを見るつもりだったが、なんとなくそんな気になれなくて…いや、まだ歌い足りなかった。だから、きっと誰もいないであろう音楽室で一人ギターを弾きながら歌いたかった。

 校舎に入り、音楽室のある階まで上がると人気は全く無くなっていた。この階は学祭でも使用しないから当たり前か。

 音楽室に入り、真ん中に座り込む。

 ギターをケースから取り出し、さっきしまうときに緩めた弦を締めチューニングしていく。耳でわかるけれど、なんとなくチューナーで合わせてみる。

 懐かしいな。あの頃はいつもチューナー使ってたもんな。

 適当にコードをいくつか鳴らしてから、歌い始める。

 初めてこの音楽室に来た時も歌った歌。私の最初のオリジナルソング。
< 103 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop