きみがため
「さっちゃん、大丈夫かな……」

光の顔が、暗く沈んでいく。

「大丈夫よ。命に別状はないって言ってたんだから」

「さっちゃんって、光の友達の?」

お母さんが、神妙な顔で話に入ってくる。

光に聞いた話によると、さっちゃんこと桜人は、子供の頃長い間ここに入院したことがあるらしい。

そのよしみで、今でも定期的に本を寄付しにきているそうだ。

入退院を繰り返し、週に一回定期健診に来ている光と知り合うのは、必然だった。

名前に“桜”がつくことから、“さっちゃん”と一部の看護師に呼ばれているらしい。

だから光も、必然的に彼をさっちゃんと呼ぶようになった。

入院中、桜人は光の心の支えになってくれた。

友のように、ときには兄のように。

自分と同じように入院を繰り返しながら、今は健康的に高校に通っている桜人は、光の憧れだった。
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