きみがため
アメリカ発祥の『デニスカフェ』は、コーヒーなどのドリンクの他に、サンドウィッチやパスタなどの食事メニューも充実していた。

ケーキやパフェなどのスイーツメニューも豊富だ。

『デニスカフェ』のバイトは、レジと厨房に分かれる。

レジは客からオーダーを取り、ドリンクを用意し、調理の必要があるメニューは厨房に声をかける。

厨房は調理をしたり、備品を補充したり、できたメニューを客席まで運んだりする。

レジ横で今日の担当を確認すれば、厨房だった。

「お疲れさまです」

「お、小瀬川くん、お疲れ」

厨房に入り挨拶をすると、店長が笑顔で答えてくれた。

アラサーの店長は、髭がダンディーなイケメンだ。声も渋くて、店長目当てに店に通う女性客も多いと聞く。

前のシフトのパートさんと交代し、仕事に入った。

仕事のときは、笑顔を心がけてる。

同じ学校のやつが見たら、気色悪いと思われそうなほどの愛想の良さだ。

学校から遠いところをバイト先に選んで、つくづく正解だと思う。

ここをバイト先に選んだ理由は、本当はもっと別のところにあるのだけど。

六時を過ぎたばかりのこの時間、学校や仕事帰りの客で、店内は混雑する。

目まぐるしく働き、ようやく客足が途絶えた頃には、二十一時を過ぎていた。

今日のシフトは、二十二時まで。

営業は深夜一時までだから、本当はもう少し働きたいけど、ぎりぎり十八歳になっていない俺は二十二時までしか働いてはいけない。
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