【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

「隼さん、もう、そんなことまで考えてくださっているんですか?」

「ええ。侑李さんさえいいと言ってくだされば、すぐにでもと思っております」

「そ、そうですかぁ。侑李、良かったじゃないか? 三十なんてあっという間だ。もう、隼さんにもらってもらったらどうだ? 兄ちゃんも、安心して婚約者と結婚できるし。天国の母さんもきっと喜んでくれるだろうし。父さんも、ビックリして、すぐに元気になるかもしれないしなぁ」

 もう、すっかりその気になってしまっている。

 ――冗談じゃない。誰がこんな鬼畜と結婚なんてするもんですかっ!

「バッカじゃないのッ! 寝言は寝てからにしてよねッ!」

 兄の言葉に激昂した私がバッと立ち上がり、啖呵を切ったまでは良かったのだが……。

 話に加わるのが嫌で、ずっと呑んで食べてを繰り返していた私は、どうやら冷酒に酔ってしまってたようで。

 言い切ったと同時に、私の記憶はそこでプッツリと途絶えてしまうのだった。

 そんな私の様子を見ていた隣の鬼畜が、人知れず、あのニヤリとした表情を浮かべていたことなど、ある一人の人物を除いては、誰一人として気づく者などいなかった。
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