【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
*番外編*煌めく未来のために~side隼~

『隼。心配してくれるのは嬉しいけど、私、仕事をおろそかにする人って大嫌い。このまま行かないって言うなら、結婚なんてしないから』

 侑李にそう言われて、致し方なく折れたものの、侑李のことが気にかかってしょうがなかった。

 けれど侑李の気持ちだって理解しているつもりだ。

 侑李は、基本気が強くて、怒ると怖いし、口調だってキツイときもあるけど、心根がとっても優しくて、頼まれたら断れない、お人好しなところのある、嘘をつけない真っ直ぐな女性だ。

 本人は隠してるつもりのようだけど、結構臆病だし、気の弱いところだってある。

 そういうところが放っておけないし、照れたり、恥ずかしがったり、不意に甘えてくれるのがメチャクチャ可愛くて堪らない。

 侑李には、いつも大袈裟だって言われるけど、どんなことがあっても、命がけで守りたいって思うし。

 侑李に頼ってもらえるように頼もしくありたいとも思う。

 こうして、愛おしくてどうしようもない侑李のことを考えていたら、脱線しそうになったけれど。

 とにかく、侑李は、自分のことよりも僕の立場を一番に考えてくれたに違いない。

 だからこそ、僕は、そんな侑李の気持ちを尊重しようと思った。

 でもそれだけじゃない。

 十五年前、侑李に出遭うまでの僕は、次期社長になる兄さんに対して、いつしかコンプレックスのようなものを抱いていた。

 ……どうせ、僕は誰からも期待されないんだ。

 そんな風にしか思えなくなっていた僕は、何に対しても無気力だった。

 そんな時に侑李と出遭えたことで、僕には夢ができた。

 どんな形であろうと、『YAMATO』の後継者のひとりとして、『YAMATO』を盛り立てていけるのなら、それも悪くないかもしれない。

 こんな小さな女の子にも愛されるチョコレートを守り続けていきたいーー。

 無気力で何も見いだせずにいた僕に夢を与えてくれた侑李。

 その侑李が今こうして僕の傍に居てくれて、こんなにも僕のことを想ってくれている。

 侑李のことが気にかかってどうしようもないけど、侑李の想いにも応えたい。

 ーー否、応えなきゃいけない。

 僕が今しなきゃいけないことは、『YAMATO』の副社長としての務めを果たすことだ。

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