【完】スキャンダル・ヒロイン

立ち上がり、車のキーを手にすると気づけば走り出そうとしていた自分。
もう遅すぎたかもしれない。

でも遅すぎたっていいじゃないか。こんな素敵な想いに気づかせてくれた静綺に想いを告げる事くらい。

その気持ちを受け取って貰えなくたって、届ける事は出来る。

「真央――」

くるりと後ろを振り返ったら、昴は顔をくしゃくしゃにさせて笑っていた。

「ごめん、昴。俺行く。」

「真央なら、そう言うと思った。もうちょっと素直になんなよ?」

「俺は……昴には負けているかもしれない。かっこ悪い男かもしれない。
けれど静綺を好きな気持ちは誰にも負けないんだ。
たとえお前と付き合ってたとしても、この気持ちを伝えなかったらきっとこの先後悔する。
だから行く、ごめん…」

トン、と背中を押された。
恋敵の背中を押すなんて、お前はやっぱりかっこいい男だと思う。

それに比べて俺はあいつの前で情けねぇ姿しか見せて来なかった。

だけどこの気持ちは本物だから、大切だったから、受け入れてもらえなくっても伝えたかった。何度も何度も後悔したから

きっと振られたとしても笑える。けれど何も伝えないまま終わったとしたら、この先笑えそうにない。

「あ、ちなみに付き合ってないよー俺とっくに振られてるし。
それに今日だって一緒に過ごす約束なんかしてない。って~!!もう既にいないしー!
人の話は最後まで聞いてよ!!!」

昴が何かを言っていたが、それも聞かずに走り出した。
走り出した想い――。

お前が誰と付き合ってようが、誰を好きであろうかなんて関係なかった。
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