朧月(おぼろづき)
テレビで見るよりも遥かに人の多さに驚きを隠せなかった。

お父さんが出世して、生まれてからずっと育っていた三重県の田舎町から東京へと転勤になった。

引っ越して数週間、家の荷物も大体は片付いてきたので東京散策に出てきたところなのだ。

「多...」

つい声が漏れる程に東京駅は人が多い。
中学校の修学旅行で東京に来たのが丁度1年前かな、なんて思い出していると寂しさが溢れてきた。

大都市に引っ越しとなり田舎育ちの私は鼻高々にしていたが、それも友達の前だけ。
本心は寂しくて悲しくてたまらなかった。
けど、もう一生会えない訳じゃないんだから...と言い聞かせ、東京へと来た。
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