愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
「は?家こっちじゃねーの?」

昌くんが何か言ってると思って振り返るとこちらに歩いてきていた。

「もうここでいいよ!ありがとう。遅いし、気をつけて帰ってね。」

そう言ってるのに昌くんはまる無視で、

「家どっち?あっちかと思っただけだから。」

バツが悪そうにそう言って私の前に止まった。
今までのビミョーな距離よりほんの少しだけど近くてまたドキドキした。
夜で良かった。きっと顔が赤くなっているに違いない。

「本当にいいのに…」

と言いながら、家のほうへ歩き出した。
本当に申し訳ないくらい近くてすぐに家に着いた。

「ここ。」

指をさしていうと、

「何階?部屋どこ?」

マンションを見上げて聞かれたから、

「5階の、今電気付いてないあの二つの部屋の右の方。」

「ふ~ん、あっ、番号教えて、いいヤツいたら紹介する。っつても俺らみたいなヤツばっかだけど。」

「ヘヘッ、ありがと~!」

別に紹介を求めてはなかったけど、単純に昌くんとの番号交換が嬉しかった。

「じゃあ、気をつけて帰ってね。ありがとう。」

「じゃあ、またな。」

そう言って来た道を帰って行くから私も自分の部屋へ帰った。
何となく、名残惜しくて電気を付けるとベランダに出た。昌くんもう見えないかなぁって下を覗くと、真下でこちらを見上げていた。

「え?なんで?帰ったんじゃないの?」

「無事に部屋の電気が付いたら帰ろうと思って。じゃ、おやすみー」

軽く手を挙げて今度は本当に帰って行った。

「おやすみー!」

近所迷惑だけど、大きな声で言ったのに振り向いてくれなかった。
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