完璧な彼が初恋の彼女を手に入れる5つの条件

「それにしても桜衣さん、相変わらずイケメンからの支持率が高いですねぇ。松浦さんも中々見た目は良いし、跡取り息子だし。まあ、何かと自信がある人じゃないと、桜衣さんほどの美人は落とせないって思うんでしょうけど」

「……未来ちゃん、それは色々間違っていると思うわよ」

 支持率って、政党であるまいし、と桜衣は溜息と共に眉間に皺を寄せる。

『美人』というのは後輩がアラサーの自分に気を使って物凄く大げさに言ってくれているだけ。
 背は162cmで体形はそれなりのメリハリがある程度でグラマーなわけでも無い。
 生まれつき茶色がかった髪は鎖骨まであるが仕事の時は基本後ろで緩く纏めている。

 ファッションは好きだが、仕事中はあまり華美にならないよう、ベーシックな服装をするようにしている。

 子供の頃から目鼻立ちは美しかった母に似ていると言われていたけれど、自分ではそう思っていない。
 母は花の咲くような柔らかい女らしさに溢れた人だったが、自分はそういった可愛げは持ち合わせていないのだ。

 間違いなく育った環境のせいだが、桜衣は顔の整った男性、いわゆる「イケメン」の類は苦手だ。イケメンに限らず、仕事以外で男性と個人的に関わるつもりが無い。
 ……のだが、こうして取引先の男性からプライベートで、食事に誘われたり連絡先を聞かれたりすることがあるので困ってしまう。
 仕事の事もあるので、無下な態度を取る訳にもいかず、それとなくお断りし続けている。
 
 彼らも本気で声を掛けてきている訳ではないだろう。
 
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