完璧な彼が初恋の彼女を手に入れる5つの条件
イケメン集会

 陽真が登壇する講演会の当日。
 桜衣は開場前のホールでノートパソコンで段取りの最終確認をしていた。

 陽真と仕事をするようなってから気づけは3ヶ月以上経っていた。
 彼の有能さに刺激され、桜衣も益々仕事に対するモチベーションが上がっていた。

 今日の講演会も、招待から当日の段取りまで準備をしっかり行ってきたので、抜かりはないと思う。

 案内に対し、予想より反響が大きく、多くの方に来ていただけることになった。

 受付は未来を始め、若手メンバーにお願いしてある。
 彼らは招待客に配るリーフレットを並べてチェック中のようだ。

 後で声を掛けに行こうと思いつつ、パソコンを操作していると、後ろから「お疲れ様」と声を掛けられる。

 振り返るとスーツ姿の長身の人物が立っていた。

「……副社長!わざわざおいで下さったんですか」

 思わず椅子から腰を浮かせる。

 猪瀬和輝。
 我が社、株式会社INOSEの副社長だ。

 目鼻立ちがはっきりした整った容貌。切れ長の目は涼やかで、一見何を考えているかわからない。
 副社長という肩書も相まって、迫力がある。

「今回の講演は僕が提案したのもあったしね。お得意先も多く来場されるから、いい機会だし直接挨拶させてもらおうと思ってる。司会進行は倉橋さんだったね、よろしく」

「はい。ありがとうございます」

 直接話したことは無かったのに副社長に名前を認識されていることに驚く。

「結城陽真はちゃんとやってる?君と組んでいるんだろう?」

「はい。色々教えられることが多いです。海外での経験があるので考え方も柔軟で、とにかくお得意先での評判も良いです」

 折角だから彼を売り込んであげよう。全て事実の事だけど。

「そうか。それは良かった。ただ、僕としては、彼が迷惑かけて君に嫌がられてるんじゃないかと心配してたんだけどね」

「……いえ?そんなことは」

 副社長の言い方に含みがあるように感じるのは気のせいだろうか。

 確かに当初は正直迷惑だと思っていたが、今ではすっかり息が合うパートナーになっていて、行動を共にすることも当然になっていた。

「じゃあ、倉橋さん頑張って」

 続きの言葉に困っていると、彼は受付に立つ未来たち若手に声を掛けに行った。

(でも、今日頑張るのは私と言うより結城の方なんだけどな)

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