かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「どうしよう……」


つぶやいたのはふたり同時だった。

夕食後、父から本当にお見合い相手の男性たちの連絡先を渡された私たちは、とにもかくにも話し合いをしなければとまた私の自室に集まっている。

くれはは定位置である座椅子でいつものハムスター型もちもちクッションを抱きしめながら、きゅっと眉根を寄せて困惑しきった表情だ。
そして丸テーブルを挟んだ向かい側に座る自分もきっと、同じような顔をしているはず。

私の手の中には、父の角張った字で瀬古さんの電話番号が記された小さな紙切れ。
それに視線を落としたまま、私は口を開いた。


「くれはは……瀬古さんとのお見合い、上手く断ってもらえるような感じにできたんだよね?」
「うん……まあ、たぶん……うーでもあのひと、ちょっと変わったところあったし……いやだけどまさか、あれでこんなふうに話を進めてもらえるとは……」


ブツブツ言いながら、彼女はクッションに顔を埋めて唸っている。

そうしてチラリと、こちらに視線を向けた。


「ことはこそ。『たぶん大丈夫だと思う』って、言ってたじゃない」
「……そのはず、なんだけど」


タクシーでホテルを出た私が家に着いたのは、お昼過ぎ。それから少しあとに、くれはが帰宅した。

そのときも一応、互いに微妙な顔をしながら「どうだった?」「まあ、なんとか」というような曖昧なやり取りをして、この入れ替わり作戦が成功したことをふわっと確認したはず、だったのに……。

どうして、こんなことに?
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