微温的ストレイシープ

𝘦𝘹𝘪𝘵




ユキノさんのところを出たわたしたちはおたがいに無言だった。


とりあえず来た道を戻っているけど、当てはない。

たぶん廉士さんもなにも考えずに歩いてる。



「廉士さん」


だから声をかけたらすぐに立ち止まってくれた。

つり目ともたれ目ともつかない双眼が向けられる。



「スマホ、貸してくれませんか」

「……いいけど」


わたしのしようとしていることに気づいてはいるんだろう。

でもなにも聞かないで、スマホを貸してくれた。


スマホの使い方はよくわからないけど、検索くらいならわたしにもできる。

出てきた検索バーに迷うことなく“榛名灯里”と打ちこんだ。



そして、検索ボタンを──────押す。





「やっぱり出てこないですね」


よく考えたらこんなので出てくるわけがなかった。


ユキノさんでさえいろんなところに潜って、おそらくハッキングもしてようやく探し当てたのに。


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