微温的ストレイシープ
離れないように必死でついていこうとしたら、鋭い眼光が飛んできた。
「おい、さっきから誰が隣に並んでいいって言った?」
「ご、ごめんなさい」
近づいた煙草の香りが一瞬にして離れていった。
まるで夜に溶けて消えたかのように、魔法使いが魔法を使ったかのように。
どこまで歩くのかも、この人が何者かもわからないまま進む闇小路。
わたし、もしかしたら頼る人を間違えたんじゃないかな。
それっきり振り向かない彼の後ろ姿を追いながら、そんな考えを打ち消すようにぶんぶんと頭を振ったのだった。