片想い歴、10年。
その姿で料理を作る奈津がかわいくて、さっきまで曇っていた俺の心に陽が差して来る。
料理を作り終えて、奈津はすぐに俺のもとにやってくる。
俺が抱きついて、その小さな肩に頭を乗せると、よしよしと撫でてくれる。
「今日は何があったの?」
「・・・交通事故で運ばれてきた妊婦、助けられなかった。」
「お腹の中の赤ちゃんは?」
「・・・危なかったけど、助かった。」
「そっか。余計に辛いね。」
両親が亡くなったときの喪失感が蘇ってきて、辛いことを知っている奈津は、そのまま俺をぎゅっと抱きしめる。
「私はここにいるよ・・・。」
そんな奈津の呟きに、俺はすごく安心する。