母を想えば


「仕事一筋の真面目な男が、謎多き色っぽい女性にハマったんでしょうかね。」


「トモさんも・・。

普段は絶対そんな事しないのに、閉店時間を過ぎてお客様をお見送りする際、

いつも最後にお店を出る杉内様のタクシーに一緒に乗って帰っていました・・。」


「「・・・・・・・。」」


真田さんから無言の視線を受け取ったので交代する。

交代というか・・“核心部分はお前が聞いていいよ”というパスを受け取る。



「じゃあ女将さんから見て、

今回の事件は2人の【不倫関係】が巻き起こした果てだと思われますか?」


「トモさんが杉内様を刺したと聞いて・・真っ先にそれが思い浮かびました・・。」


すげーな・・。

土砂降りの現場検証の中、

早苗さんが当てずっぽうで見立てた内容があながち間違ってなかった事になる。



「ママ。最後に一つお願いがあるんですけどいいですか?」


「あ、はい・・。」


「私と小西をこのお店の会員にしてくれませんか?」


「え!?」

女将さんより先に、
俺がリアクションを挙げてしまう。

いきなり何を言い出すんだこの人は・・?



「あ・・本当は会員の方の紹介が無いとダメなのですが・・。」


「多分そうだろうなぁと予想してました。

ご安心ください、私も小西も財布の中はスッカラカンなので1回だけで退散します。」


「じゃあ1度だけ特別に・・。」



ちゃんと真田さんが奢ってくれるんだろうな・・?

そんな一抹の不安を抱えながら、
“蝶舞蘭”を出て、再び車に乗り込んだ。






第4話 完











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