3人の理想郷
「や、やめなよ」
「いいんだよ、シャル」

そう言ってシュウ達はプレイヤー達に殺されて行く。
…大丈夫、二回までは死なない、きっと皆3回も殺すほど残酷じゃない…。
そう思い見守りつつも私はその選択を後悔した。

「シュウ?レスター???」

リスポーンした二人はその場に倒れ込んだ。
辺りがざわめき、私は自分の体の温度が下がって行くのを感じる。

「お、おい…お前がやれよ」
「そういうお前がやれよ…」
「そう言ってるお前がやれよ!」

仲間割れが始まった。
だれもが嫌がり、押し付け合って行く。
私はそれを、ただただ見守る事しか出来なかった。
ガキン!どこからか音がなり、ナイフがレスターの腕に刺さっていた。
そうして、ナイフの後に続くように皆が物を投げつけて行く。
体中に剣が刺さり、シュウとレスターは死んだ。
だがもう一度、リスポーンする。
私の体の温度が下がり続ける。
もう、下がらないほどに。

「…け」

私が呟き、皆が止まり私に注目する。
シュウもレスターも、悪いわけじゃ無い。
私はデストラスを引き抜き、言った。

「どけと言ったのが聞こえなかったのか?」
「…!お、お前らがデスゲームを始めたんだ!」

だれかが反論し、それに続くように皆が反論を始める。

「黙れ、道を開けろ」

私がそう言うと、皆が大きな声で反論する。
どこからかナイフが投げられ、私はそれを最前列のプレイヤーの腕に投げる。
ナイフが刺さり、辺りが静まり返った。

「次は頭だ、お前らゴミを消し去るぞ」
「道を開けろ」

そう言って歩き始めると、皆が道を開けていく。
私はその道を進み。

「行くよシュウ、レスター」

シュウとレスターを背負って街の外へ出た。
…までは良かったんだけど。

「ぜぇ…はぁ…はぁ…ふう…」

私って盗賊シーフだからスタミナ無いんだよ…。
普通は逆でしょ…ウォーリアのレスターがやるべきでしょ…。

「もう無理ぃ…」

そう言って私はシュウ達を降ろした。

「シュウ、レスター起きて」

そう言って私は彼らの体を揺らす。
微かに動いたが起きない。

「よかったー…生きててくれてよかったよー!!!」

そう言って私は彼らに抱きつく。
一回で死んだんじゃないかと心配だったのだ。
そうやって少しの間過ごし、顔を上げてまた彼らを背負い歩きだした。
丘を登り、湖を目指して居ると明かりが見える。

「どうして…」
「なんで追って来ちゃうのよー…」

だが、追って来るなら湖なんてすぐに見つかってしまう。
プレイヤーが最も遅く来るのは山岳だろう。
そう思って私は山岳へと歩きだした。

「さすがにあの数は倒せ…いや、私だけなら行けるんだけど…」
「二人を守りながらは厳しいんだけどねー…」
「早く行かないと…」

そう言って走り始めた。
…私は馬鹿だった…。
走って数分も持たなかったんだよ…?。
いつもは数分持ってたのにな…初期ステータスって残酷。
これはレベルを上げて運んだほうがよかったな…。

「ふう…疲れたな」
「居たぞー!!!」
「へ?」

声が聞こえ、後ろを見ると8人のプレイヤーが居た。
私を見て追いかけて来る。
捕まったら皆死ぬ。
ならどうするのがいいのか。
何を捨てたら私達は生きれるか。
見間違う事は許されない。

「私なら一撃で倒せる…?」

それなら最悪、奴らを殺してでも逃げるべきだろう。
そう思い、私は山岳へ歩く速度をはやめた。
スタミナが切れても、走れない訳じゃ無い。
MPとHPを使って走る事が出来るのである。
私は走り続けた、山岳の上へと。
途中からたくさんのプレイヤーが集まり始め…。

「メェ!」
「メエエエェェェェェ!!!」
「この声は…」

私は進路を変えて山岳の横の大樹の森へと進路を変える。
初期プレイヤー100人とあいつなら100人のほうがましだ!。
私はスピードを更に早めて走り始める。
山岳の裏側から夜空よりも暗い生物が跳ぶ。

「メエエェェェエエエェ!!!」
「な、何だ!?」
「あんなの居なかったぞ!?」

そいつの名は『黒い仔山羊』
私らはその危険性を良く知っている。
私が逃げる間に奴らは逃げたり立ち向かったりしている。
逃げれるとは思えないし、勝てるとも思えないけど。
私は大樹の森に逃げ込んで行く。
疲れるな…そこにモンスターが現れる。
死神使えば行けるかな…?。

「【死神】」

私は鹿のモンスターを捕まえ、切りつける。

「ステータスオープン」

『HP100・MP100・ST37』
すごいな…さっきまではHPまで減ってたはずなのに…。
STを最後まで回復させよう、そう思い鹿が死ぬまで切りつける。
(【盗賊シーフ】のレベルが1/100が3/100に上昇。
基礎ステータスが上昇、攻撃7・防御3・素早さ9・魔法5。
消費ステータスが上昇、HP300・MP300・ST300)
よしよし、鹿肉も手に入ったし薪集めに行こうかな。
私はシュウとレスターを木の幹にもたれかからせて薪を探しに出かけた。
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