捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 これから改めて家族になるのだと思っていたけれど、涼さんの中では違っていた。私ばかりがこだわって線を引いていたのだ。自分の望む『本当の家族』がどういうものなのか、きっとわかっていなかったから。

「あの日、お前を捨ててすまなかった」

「ううん。私も誤解させてごめんね。お母さんのことも……」

 氷が溶けるように私たちの間にあったものも溶けていく。

(もう、ちゃんと好きって言っていいんだね)

 これまでどこか引っかかり続けていたものが消え、今は心置きなくキスを受け入れられる。身体を重ねても満たされずにいた気持ちにやっと隙間がなくなった。

 涼さんが触れるだけのキスをしてくれる。

 欲求を伝えるものではなく、純粋に心を埋めるような温かいキスだった。
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