捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~

 靴も脱がずに立ちっぱなしだった涼さんが困ったように言う。鳴がいないからなのか、なんだか私自身が甘えたくなってしまった首を横に振った。

「やだ」

「……翠」

「やだー」

「お前が鳴になってどうする」

 呆れているのかと思い、そっと見上げてみる。

 涼さんは苦笑していた。

「離れてくれないと動けない」

「……離れたくない」

「そういうのは着替えが済んでから言え」

「今、離れたくないの」

「……まあ、たまにはいいか」

 なにが、と聞こうとした瞬間、不意に身体が宙に浮く。

「ちょっ、待って……!」

 涼さんは私を軽々と抱き上げていた。慌てて首に腕を回ししがみつくと、器用によしよしと頭を撫でられる。

「お前が動かないなら、俺が動かすしかないだろう」

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