君だけが知っている君へ。
プロローグ

20☓☓年。

「なんで私のパパはいないの?」

もうすぐ5歳になる娘が言った。

いつかちゃんと、説明してあげなきゃいけないことは分かっていたけれど……

思っていたよりも早かったな。

「パパはちゃんといるよ」

「どこにいるの?」

「それはね、ママにも分からないんだ……」

なんて説得力の無い言葉だろう。

シングルマザーの私は今年30歳になった。

娘の父親は生きている。

娘は覚えてないだろうけれど、何回か会ったこともある。

だけど一緒に住めない理由が私たちにはあったんだ……。

それを5歳の娘に伝えることが正しいのかどうか、このときの私には分からなかった。
< 1 / 38 >

この作品をシェア

pagetop