ウルルであなたとシャンパンを

「そうなのか……」

悲し気に眉を寄せたルカに、香耶はあわてて明るい調子で付け加える。

「もうずいぶん前のことだし、ちゃんと見送ってあげられたからよかったと思ってるの。柿の木にのぼって下りられなくなったのも、今はいい思い出よ」
「……カキノキ?」

不思議そうに繰り返したルカは、申し訳なさそうに香耶を見返した。

「ごめん、その……カキノキって、なに?」
「…………え?」

当然のようにあると思っていたものについて聞かれ、戸惑いながらも説明している途中で、さっきの男性がワインのボトルとグラスを持ってきた。

日本でもワインを飲みはするけれど、ボトルで頼むのは初めてだ。

周りを見れば、どのテーブルにもワインか何かのボトルが置いてあるから、オーストラリアではこちらの方が一般的なのかもしれない。

グラスに注がれた淡い黄色の液体を眺めながら、そんなことを考えていると、その片方を手に取ったルカが小さな声で確認して来た。

「カンパイ……で合ってる?」
「うん、カンパイ、で合ってる、大丈夫」

笑いながら、香耶もグラスを手に取ると、ルカは軽くグラスを上げてにっこり微笑んだ。

「カンパイ、カヤ」


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