君がいたから 陽翔、結菜side

お昼前、私はタクシーで病院まで行った。


もう少し、待てば陽翔の昼休みだけど、陽翔にはしっかり休憩とってほしいから。



病院の中は独特な消毒液の臭いがした。


エレベーターで小児科病棟まで上がり、結愛の病室まで向かった。



規則正しく呼吸して寝ている結愛。


眠っていれば、体が辛いとかは感じないのかもしれない


でも、副作用で肌も荒れていて、この前見たときよりもさらに痩せた体を見ていると胸が苦しくなった。




「結愛、…………… 」


…頑張って、結愛なら大丈夫だよ。


そんなことを言おうとしている自分に気がついて、口をつぐむ


自分が抗がん剤の治療をしていたときのことを思い出すと
『頑張って 』なんてやっぱり言えない。


だって、結愛は必死に生きようともう頑張っている。


頑張っている結愛に、何もできない私がこれ以上『頑張って 』という言葉なんて…


気持ちを落ち着かせるために何度か深呼吸して、目を閉じた。



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