ハナヒノユメ
今日の彼はいつもよりは調子が良さそうだ。

と言っても、基本は反応がないし、顔色がマシかなって思っただけだけど。

「すみません、保坂先輩。
石井先輩は用事があるそうなので今日も私が来ました。」

「…。」

「えっと…お花はそろそろ変えた方がいいですよね。
これに変えておきますね。」

私は、先輩の前に買ってきたお花を差し出してみた。

見えているかは分からないけど。

でも…、あれ?

やっぱりちょっとまばたきしてるかな?

「いいにおいしませんか?
私、このお花が結構好きなんです。」

「…。」

…あ。

手が、ちょっと動いた。

気になってるのかな。

私は、花をひとつ、彼の手のひらにのせてみた。

「…。」

「えっと、お花を今手に…。」

親指で、優しく触ってる…。

やっぱり、分かるんだ。

「あ、あの…私のこと、分かりますか…?」

「…。」

「保坂先輩…。」

恐る恐る肩に触れてみる。

「…っ…。」

目を見開いてる。

それに今、瞳が揺れて、輝いたみたい...?

「先輩、お花好きですか?」

「...。」

「石井先輩は、お花好きですよね。よく、先輩と見に行ったって言ってました。」

あまり上手く喋れないけど。

「また、2人で見にいけるといいですよね。」

「…。」

また、戻ってしまった。

でも、いい兆候かも?
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