冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(まさか、ロニーとこんなところで会えるとは思わなかった。それに、あの頃の言葉を、彼が今も覚えてくれていたなんて……)
「俺が騎士団に入ったキッカケも、リリー様だったんですよ」
「私が……?」
「はい。リリー様が願う、平和な世を自分の手で作りたい。そう考えていたときに偶然、ラフバラの聖騎士団を率いるリアム様に拾っていただいて、今の俺があるんです」
そう言うとロニーは、くすぐったそうに微笑んだ。
頬にはいくつかの切り傷があり、彼が聖騎士団の隊員としてこれまで厳しい訓練に耐え抜いてきたことがよくわかる。
「そうだったのね。ロニー……本当に、ありがとう」
リリーはそんなロニーを、あの頃と同じように抱きしめようと手を伸ばした。
「……えっ!?」
けれど、既のところで腰に手をまわされ、ロニーを抱きしめることは叶わなかった。
「――ダメだ」
「リ、リアム?」
リリーを捕まえたのはリアムで、彼はなぜか非常に不機嫌そうな顔をしている。
リリーは何故リアムが怒っているのかもわからず、キョトンとしながら首を傾げることしかできなかった。
「ふふっ。本当に、リリー様はリアム様のものになってしまったんですね」
そんなふたりを見てロニーは笑いながらそう言うと、
「でも、リアム様がご心配しているとおり、俺はもう小さな子供ではなく、ひとりの男ですよ?」
そう呟き、リリーに向かって大人びた笑顔を浮かべて胸に手を当てる。