冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「夜明けまではまだ十分に時間もある。今日はきみの身体を隅々まで愛でて、きみの弱いところも乱れた姿も、思う存分、堪能させてもらうとしよう」

「ん……っ!」


 言い終えたリアムは再び、リリーに噛み付くようなキスをした。

 獰猛な獣のような彼の熱に、身も心も溶かされてしまいそうになる。

 この先何度、リリーはこの優しい獣に抱かれるのだろう。

 考えたら考えただけ、逃げ出したい気持ちにもなる。

 けれどそれは、決して嫌な気持ちだからではない。

 ただ、彼から与えられる熱があまりにも熱すぎて……。たまらなく恥ずかしい気持ちになって、つい逃げだしたくなってしまうのだ。


「リリー、愛している」


 バルコニーの手すりに追い詰められているリリーに、当然ながら逃げ場などあるはずもなかった。

 けれど、それを理由にリリーはリアムに身体を委ね、そんなリリーに気づいたリアムがゆっくりと唇を離して、リリーの身体をベッドに運ぶために抱えあげようとした、そのとき――。


「おかーたま? おとーたま?」

「……っ!」


 いつ起きたのか、オリビアが眠い目を擦りながらふたりのもとまでやってきた。

 小さな腕には白いうさぎのぬいぐるみが抱えられている。

 それを見たふたりは慌てて距離を取ると、すぐにオリビアのもとへと駆け寄った。


「ど、どうしたの、オリビア?」

「んー。さんにんで、いっしょ。ねよぉ?」


 愛しいそのお願いに、叶うものなどあるはずもない。

 リリーとリアムは互いに顔を見合わせクスリと笑うと、小さな手を取り寝室へと戻っていった。

 美しい月明かりの差す部屋で、三つの影が静かに重なる。

 夜空に浮かぶ満月だけが、その様子をほほえましく見守っていた――。





 
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